高域補間を行ってくれるアップサンプリングソフト、Upconvについて

 

 

 

アップサンプリング、高域補間とは

アップサンプリングとは、読んで字のごとく、サンプリング周波数をより高いものへと引き上げることです。

極端な話、計算で波形を予測して作ることだと思ってもいいと思います。

 

高域補間とは、アップサンプリングによって、ナイキスト周波数が上がるのを利用して、元音源のナイキスト周波数より上の高音域を付け加えることです。

CDのナイキスト周波数は22.05kHzです。これ以上の高音域はナイキストの定理によって失われます。

人間が聞き取れる音は約20kHzまでですから、それに基づいて、CDのサンプリング周波数が決められたと考えれば自然です。

20kHzの波形を復元するには、その二倍の40kHzでサンプリングすればよいのです。

 

96kHzのハイレゾ音源のナイキスト周波数は48kHzです。

96kHzでサンプリングしたデータはその二分の一の周波数まで復元できるので、48kHzになります。

96kHzのハイレゾ音源を、スペアナで見てみると、そのナイキスト周波数である、48kHzまでの波形が見られるはずです。

 

f:id:spasexrom:20181025230314p:plain

アップサンプリングと高域補間のメリット

PCのソフトウェア上でアップサンプリングをするメリットは、やはり音が良くなる場合があるという点です。

すべての場合において音が良くなることはありませんが、私はアップサンプリング肯定派です。

 

DACチップの性能が低く、デルタシグマ変調の前段階のオーバーサンプリング処理の精度が低い場合、予め、高精度でアップサンプリングされたデータを入力すれば、低精度なオーバーサンプリングの影響を受けにくくなって音がよくなる、という解説がされていた気がします。

 

 

Upconv

Upconvはアップサンプリングとともに、高域補間を行ってくれるフリーソフトです。

フリーソフトのページ

フリーソフト - upconvfe 0.7.x の仮公開: 59414d41のブログ

 

この2つのリンク先の説明を読めば、Upconvの高域補間の手法と、そのメリットがわかります。

ダウンロードは下のリンク先からできます。

 設定がいささか難解なので、マニュアルを読むべきです。

Upconvの解説をしているサイト

擬似的にCD音源をハイレゾ化するアップコンバートツール – Upconv - 道すがら講堂

CD のハイレゾ化 勉強中

20141229

ハイレゾ音源の価値|IKUN|note

 

実際に変換してみます。

今回は、カラヤン指揮の惑星から一曲選びます。

もちろんCDです。

木星を選びました。

f:id:spasexrom:20181026015300j:plain

 

波形をみてみると、こうなっていました。

f:id:spasexrom:20181026020556p:plain

f:id:spasexrom:20181028003231j:plain

CDなので、20kHzくらいで音が途切れています。

 

 

Upconvの設定

各項目、どのような役割があるのか、みていきます。

 f:id:spasexrom:20181026020002j:plain

 

HFCという欄はカットする周波数です。

HFAの欄をHFA3に設定し、HFC欄に20000と入力します。

すると、20kHz以上の周波数をカットし、補間します。

 

余裕をもたせて、19800という値を入れました。

これで、19.8kHz以上の周波数をカットして、そこから先を補間してくれるはずです。

 

サンプリングレートは4倍の、176.4kHzに設定しました。

Upconvによる処理後、スペアナでみると、88.2kHzまで波形がみられるはずです。

 

ビット数は24bitにしました。

32bitFloatに設定できるのですが、32bitFloatでは、ダイナミックレンジは24bitと同じ、144dbなので、ファイルサイズが増えるだけで、あまりメリットがないのでやめました。

 

次はExtra設定です。

f:id:spasexrom:20181026005354p:plain

 

HFC Autoは、HFCを手動で設定したのでチェックを外します。

 

ハイパスディザのカットは、不自然に高域が強調されるのを抑える機能のようです。

頼りたいと思います。

 

低域調整は低域の音声レベルが小さくなっているものに関して、補正してくれる機能です。

悪くなることはないと思うので、チェックをいれました。

 

オーバーサンプリングについてですが、余裕をもたせたほうが良いのではないかという、素人の浅薄な考えでチェックを入れました。

 

出力モードについては、いまいち理解できなかったので、聞き慣れた、ノイズシェーピングを選択しました。

ディザレベルにも特に意図はありません。

 

Option2です。

ここではノイズリダクションや、高域を弱める設定ができます。

 f:id:spasexrom:20181026010003p:plain

ノイズリダクションはしません。

下手なノイズリダクションは、音楽を変質させてしまいそうで怖いからです。

また、今回の音源はノイズが殆ど無いので必要ないと感じました。

 

ローパスフィルタは高域が強いと感じた場合に使うと有効です。

最初なので、ここは空白にしておきます。

 

設定はこの辺で終わりにして、実際に変換してみたいと思います。

開始ボタンを押せば、変換が始まります。

 

 

変換中のCPU使用率とメモリの使用率をみてみました。

Upconvが重いソフトだとよくわかります。

32GBあるメモリのうち、約23GBが使われてしまいました。

f:id:spasexrom:20181026010656p:plain

10分くらい経って、変換が終わりました。

最新のCPUを積んだPCならもっとはやく変換できると思います。

 

 

波形の変化

変換された音源をみてみます。

 

変換後の波形です

f:id:spasexrom:20181026021032p:plain

f:id:spasexrom:20181028003724j:plain

 

40kHzあたりまで波形が現れました。

しっかりと、高音域を補間してくれたようです。

元データと聴き比べて、良いと感じたら本当の成功です。

 

同じ曲ではないのですが、本物のハイレゾ音源の波形です。

f:id:spasexrom:20181026021534p:plain

f:id:spasexrom:20181027224611j:plain

 可聴域外の超高域があることがハイレゾ音源である根拠になるとは思いませんが、こうして超高域まで波形が見られると、安心します。

全く何も見られないと、ちょっと不安な気持ちになります。

しかし、96kHzという、可聴域を遥かに超えた周波数まで音が出る楽器はないので、20kHzを超えたあたりから何も見られなくなりました。

 

リン・レコーズのMozart: Requiem です。

f:id:spasexrom:20181026021810p:plain

Mozart: Requiem (Reconstruction of first performance) - ハイレゾ音源配信サイト【e-onkyo music】

【連載】世界の高音質レーベル詳解 「Linn Records リン・レコーズ」 - ハイレゾ音源配信サイト【e-onkyo music】

 

さて、アップサンプリング及び高域補間を行った音源の音質についてです。

CD音源で感じていた、窮屈さが軽減されました。

高域が自然に伸びていて、とても聴きやすいです。

楽器の響きも美しくなったと感じました。

高域補間の効果は間違いなくあると思います。

 

 

比較

本物のハイレゾ音源と、Upconvでアップサンプリング&高域補間を行った音源を見比べてみます。

Upconvの高域補間がどのくらいの精度で失われた高域を復元できるのか気になりました。

 

まず、e-onkyoなどで販売されている本物のハイレゾ音源を用意します。

それをダウンサンプリングして、CDクオリティ(44.1kHz)のデータにします。

そのデータをUpconvで元のサンプリングレートまでアップサンプリング&高域補間をします。

2つのデータをWaveSpectraにかけて、見比べます。

 

 

「軌跡jdkアクースティックス」というアルバムから一曲選びます。

これはe-onkyoで販売されていて、説明には、

業界初の(Hi-Res音源)録りおろしアルバム

と書かれていましたので、間違いなく、ハイレゾだと思います。

f:id:spasexrom:20180616152221j:plain

軌跡 jdk アクースティックス - ハイレゾ音源配信サイト【e-onkyo music】

 

96kHz、24bitの音源です。

波形はこのようにみられました。

f:id:spasexrom:20181027023635j:plain

f:id:spasexrom:20181028005630j:plain

96kHzの二分の一である、48kHzまで音の存在が確認できました。

 

これをEcoDecoTooLというソフトでダウンサンプリングします。

f:id:spasexrom:20181027022737p:plain

 

このような波形になりました。

22.05kHzまで音が入っています。

f:id:spasexrom:20181027023648j:plain

f:id:spasexrom:20181028005702j:plain

 

Upconvを用いて、さっきと同じ手順でアップサンプリング&高域補間を行います。

 

元音源と同じ、96kHzに変換した音源と、44.1kHzの2倍の88.2kHzのものとで、2つ作りました。

f:id:spasexrom:20181027030954j:plain

f:id:spasexrom:20181028005753j:plain

96kHz

 

f:id:spasexrom:20181027031024j:plain

f:id:spasexrom:20181028005811j:plain

88.2kHz

 

もとの波形とはだいぶ違いますね。

高域補間は、あくまで予測による補間なのだと再認識します。

まとめ

Upconvは素晴らしいソフトです。

アコースティックの、生楽器を使ったもの、クラシックとかそういうものをUpconvでアップサンプリング&高域補間をすると、基本的に素晴らしい音になります。

例えば、バイオリンの音は、Upconvで高域補間を行うと、より自然にきこえます。

44.1kHzの音源では、不自然とはいいませんが、なんとなく窮屈さを感じます。

 

どうじに、Upconvは難しいソフトだと思います。

最初は、設定項目が多く、何をどう設定すればよいのか、わかりませんでした。

自分で設定を弄って、自分好みの音をつくるしかないのでしょう。

ワンタッチで、簡単にハイレゾ音源が手に入る、というソフトではないと思います。

Upconvで高域補間を行うと、ノイズが入ってしまう音源もありました。

 それでも、成功した音源の音は素晴らしいものです。

 

私にとって、Upconvは難解なソフトです。

それゆえ、この記事には、間違った部分があると思います。

その場合は、間違いを指摘してくださるととても嬉しいです。

その他、Upconvのおすすめの設定があれば、どうぞ、教えてください。

Upconvと検索しても、その設定についての記事はあまりヒットしません。

これの設定について、シェアしていただくと嬉しいです。

【第73回】「ニセレゾ」疑惑の真相とは − K2HDのハイレゾは本当にハイレゾか? (1/7) - PHILE WEB

K2HDマスタリング

K2HDのハイレゾ音源に気をつけろ!! | 左に右折-TRTTL-

FLAIR | K2HD

偽ハイレゾ音源に騙されるな!K2HDアップサンプリング音源に注意せよ! | 同人イラスト・漫画・同人サークル|infernoayase-インフェルノアヤセ-

K2HD MASTERING | K2 TECHNOLOGY

Review - 透明のウイルス